ポーキー・ザ・アフター

あの戦いから100億年以上の月日が流れた……。僕をカプセルに閉じ込めやがったアン・ドーナッツ博士はもう既にここには居ない。奴は自分の作った「ぱられるわ~るど帰還カプセル」でネス達のところへ帰ったからだ。

「ぼ、ぼくも……はぁはぁ。ぜぇぜぇ、連れて……け……」

僕は声の出し方も忘れていたし、声を出す事さえも死ぬ程辛くなっていたが、ネスにもう一度だけ会いたかったから、アン・ドーナッツ博士に命令したんだ。すると、アイツは分厚いレンズの眼鏡を上にずらしてこう言ったんだ。

「およ? ポーキー君は自分で絶対安全カプセルに入ったんだよね? 悪いけど、カプセルの中にカプセルを載せていけないんだよ」

「はぁはぁ……だったら、お前は僕の傍に居ろよ……僕のしもべはお前だけなんだから」

アン・ドーナッツは天を見上げて、呟いたんだ。

「もう……充分だよね。太陽の爆発が迫ってきてるんだ。もう、十分じゃないかな? ポーキー君?」

「ふ、ふふふ、ふざけるな……お前だけは一生僕のしもべなんだ!」

「もう! いい加減にしてくれないかな、ポーキー君。絶対安全カプセルと君の不老不死がある限りは太陽の爆発が起こった後でも生きられるだろう。じゃが、ワシは人間だから、死んでしまうよ。死んでしまったら、ポーキー君の面倒はどの道見れないからね」

「だったら、死ねよ! 逃げるのと死ぬのだったら、死ぬ方がいい!」

「ん? それ、本気で言ってる……の?」

アン・ドーナッツは誰にも見せた事のない眼鏡を外した状態の顔でカプセル越しの僕の顔を真剣に見つめていたんだ。僕は冗談のつもりでアン・ドーナッツに言ったんだ。アン・ドーナッツだって、僕に100億年以上付き合ってくれたんだ。きっと、アン・ドーナッツなら僕と同じで死なない身体になってると思ったんだ。だけど、アイツの反応を見てると、どうも僕と違って、死ぬらしい。でも、たとえ死ぬ事になったとしたって、ロボット達にアン・ドーナッツの身体を機械化すれば万事OKだと思ったんだ。

「あのね……ワシには家で待ってくれている家族が居るのよね。それに、ワシにはやりたい事が一杯あるのよ。こんなところでポーキー君と一緒に太陽の爆発で死にたくないのよね」

「……」

「分かってくれないかな?」

「………じゃあ、僕はこれから、どうやって生きろって言うんだよ。太陽もない真っ暗な世界で一人で過ごせっていうのかよ」

「……ワシはカプセルに入る事の注意事項は聞こえないぐらい小さい声で言っておいた。聞かなかったのは君のせいだよ。でも、ワシにも責任感はあったから、ポーキー君に100億年は付き合ってあげてたんだ。だけど、ポーキー君は一向に自分の力で解決する方法を見つけようとしなかったよね?」

「当たり前だ! 僕は王様なんだ!」

「あのね……ポーキー君。君は立派な大人だし、王様っていうのは、自分だけを守る為にあるんじゃないんだよ。王様っていうのは、本当はしもべの為に動く人の事を言うんだよ」

「うるさいうるさいうるさい!! 学校の先生みたいな事を言うなよ! 頭が痛くなってくるじゃないか! もういいよ! あっかんベーーー!! だ! アン・ドーナッツ! お前の顔なんてもう見たくもないし声も聞きたくない! あっちへ行け!! へへへへ!」

「………本当にいいんだね? 後悔しないね? ワシ以外に誰も来ないよ? 自分の力で考えない限りはそこから一歩も動けないよ? いいんだね?」

「いいよいいよ! あっかんベー!! ネスが助けに来てくれるんだもんね!! お前なんかが居なくったって!」

アン・ドーナッツは眼鏡をかけ直してカプセルの最終調整を行っていた。どうやら、本気でこの世界からネス達の世界へ帰るようだ。僕はアン・ドーナッツに謝ろうかと思ったけど、僕は王様だから、そんなカッコ悪い事は出来ないもんね。

「言い忘れてたけど、ネス君やジェフ達はポーキー君を探し回ってたようだよ。ただ、ポーキー君がこの世界に来てる事は知らなかったようだけど」

「ネスはPSIの力を持ってるんだ! 頭の良い奴なんだ! きっとこの世界の場所は分かるはずさ」

「……本当にそうだったら、動物をサイボーグ化する前に来てると思うけどね」

「うるさい!! さっさと帰れよ!! バーカ!! バーカ!! バーカ!!」

アン・ドーナッツは捨て台詞を吐きながら、カプセルに乗り込んで、僕のカプセルを見つめながら消えていった。アイツは最後に手なんかを振ってたけど、僕は舌が乾くまでアッカンべーをしてやった。

もういいもんね! 太陽が爆発したって、僕とこのカプセルが絶対に絶対に壊れる事はないんだし、真っ暗な世界だって生きていけるんだからね。それに待ち続けていれば、いつの日か必ずネスが助けに来てくれるんだ。アン・ドーナッツなんかが居なくったって、僕はヘッチャラなのさ。へへん、だ。

アン・ドーナッツが消えてから、太陽の爆発が数千万年後に起こった。僕は赤子のように身体を震わせて身体を丸めながら、何万年も続く太陽の爆発の轟音と熱気に耐え続けた。絶対安全カプセルは外傷からは身を守ってくれる乗り物だったけれど、極端な気温の変化と鼓膜が潰れるほどの轟音、身体が業火に焼かれ続けるような熱気からまでは守ってくれなかった。僕は確かに不老不死だけれども、病気や環境の変化や飢餓に関しては生身の人間と何ら変わりない。アン・ドーナッツが居るまではそういった不安や健康状態の管理も大丈夫だった。アン・ドーナッツは医師免許も持っていたんだから。でも、あいつが居なくなって太陽が爆発すると、僕の移り住んだ宇宙コロニーも崩壊したし、アン・ドーナッツがメンテナンスしてたロボット達もサイボーグ動物達も全て消え失せた。

政治や社会科学の分野は僕がしっかりと監視管理していたけれど、自然科学の分野だけはアン・ドーナッツとどせいさん達が居てくれなければうまく回らなかった。僕は唯一の友にして、賛同者までも失って、初めて人間は一人で生きていけない事を自覚した。どんな王様も最期はみんなから見捨てられて死んでいく。その事に気付いた時には手遅れだった。僕は外に出たくても出れないし、死にたくても死ねない身体になってしまった。100億年という長い月日もアン・ドーナッツや人間の科学文明の利器によって退屈しのぎになっていたが、太陽の爆発で全てが無に還っていった。僕はそこから無限に広がる時間と空間に対する戦いを強いられる事になっていったのだ。

悲しくて寒くてお腹が減る事があっても、その反応が身体から現れることはなかった。僕は確かに不老不死だったけれども、100億年を過ぎる頃には僕の身体からは血液の循環と筋肉の伸縮の動きを感じる事は出来なくなっていた。おそらく、僕の身体が腐敗して、ミイラ化し始めてきたんだろう。それにしても、身体の腐敗化はかなり遅く感じたけれど。僕は長い時の中でネスの事しか考えないようになっていた。

そう言えば、ネスは一度だけ僕を見捨てた事があった事を思い出した。あれは僕が小学4年生の頃だったな。僕が学校の廊下でいじめられている時にネスは廊下の階段の壁際から覗く事しか出来なかったんだっけ。まぁ、あの頃はPSIの力もなかったし、相手もラグビーをやっていた上級生ばかりだったけれど。

あの時のネスの視線は目を逸らすような感じだった。ハッピーハッピー教に頼まれて、ポーラって女の子をさらった時もあんな感じだったな。まぁ、あの時はすぐに僕を睨み付けたんだけれど・・・・・・ね。

結局はネスも人間だったんだ。弱い奴だとか気に入らない奴は容赦なく見捨てる。それが人間だ。ネスは僕がいじめられてる時も助けてくれなかったし、ハッピーハッピー教の時に女の子をさらった時も殴ろうともしなかった。

―――そう。ただ見捨てるだけだ

それでも、僕はギーグの部下になってまでも、ネスに構って欲しかった。怒って貰ったり、殴ってもらっても構わない。ただ、僕という存在を無視しない、僕の話をちゃんと全部聞いてくれる友達が欲しかったんだ。

でも、ネスはハッピーハッピー教の一件以来、僕を無視し続けた。本当はノーウェア島の事件の時はネスに出てきてもらいたかったんだ。ネスがどういう反応とどういう顔をするのか、見て欲しかった・・・・・。本音としてはネスが僕のことを褒めてくれることを期待したいんだけどね。「ポーキー、王様になって凄いね!」だとか「みんなをちゃんと、従えているね!」とかそういう事を言って貰いたいんだけどね。

でも、結果は違った。最終的にはリュカというクソガキに僕の計画が全て台無しにされた。あいつの最期の目は絶対に忘れる事は出来ない。

僕があいつの家族を滅茶苦茶にしたから? 違う・・・・・・あいつの視線とあいつの目はネスが僕を見捨てた時と同じ目だった。怒りや復讐に燃える目じゃない。悲しみの目でもなかった。視線を合わせようとしない・・・・・・・目を見ようとしない。僕という存在を無視して、部屋の奥に隠しておいた仮面の男だけを心配そうに見つめる視線だった。僕の話や僕の存在なんてあいつは最初から気にもしていなかった。憎しみや怒りよりも仮面の男に対する心配事だとか情ばかりが先行してるだけだった。僕の事なんて頭にも入っていない。

僕なんていう存在は敵としても無視されていたんだ。リュカとネス・・・・・・こいつ等だけは僕にちゃんと構ってくれると信じていたのに、僕が目の前に居るのに、無視し続けたんだ。絶対に許す事は出来ない・・・・・・必ず、あいつ等に復讐してやる・・・・。

こんな、カプセルは所詮、人の作ったものなんだ。壊したり失くす事は絶対に出来るはずさ。僕の身体は腐って消滅しても、自分の意志で動かす事は出来ない。でも、僕の魂・・・・・・・精神は今も生き続けている。

「ネス・・・・・・ネス・・・・・・ネス・・・・・・ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン」

心の中で呟き続けたその言葉から、僕の魂が身体から抜け出た感覚を覚えた。僕の目の前には骨と皮だけに変わり果てた年老いた僕の身体はスモークのガラスがかかったカプセルに包まれている。

太陽の爆発によって、周囲の銀河や星々は存在していない。あるのは暗黒と暗闇が永遠に広がる無の世界だけだった。

昔、読んだ漫画で世界や宇宙は一巡するって言う話があったけれど、カプセルの位置する座標軸では何億年経っても、宇宙が誕生する事はなかった。

「ボクハ・・・・・・シヌコト ハ エイエン ニ ナイ ンダ。ギンガノ ドコカニ ネスサン ノ セカイガ マタ デテクル カモ シレナイ。 サ、サガ、サガス、カ・・・・・・・。ネス、サン」

魂だけの存在になった僕は精神生命体へと進化しギーグ化して、無限に広がる宇宙の中で一巡しているはずのネス達の世界を探し始めた。僕をバカにした人間と僕を無視した人間と、僕を笑ってきた人間達に必ず復讐する為に壮大な旅を始める事にした。

ネスに会って、アイツが苦しんだり、悲しんだり、あいつとあいつの周りの人たちの不幸になる人生を、僕と同じ人生を味あわせてやるんだ。待っていろよ・・・・・・ネス。お前のぐしゃぐしゃになった顔の目の前で、すべての生命体とすべての星とすべての世界を破壊して、滅茶苦茶にして、全ての人生を粉々にしてやるからな・・・・・・・・。

これは、ネスが悪いんだ。僕を無視して、見捨てたネスに対する僕の怒りと復讐なんだ。ネスの目の前で大事な人や大事な世界や大切な物をバラバラにしてやる・・・・・・。

僕が絶対安全カプセルに閉じ込められたのも、あらゆる世界から追放されて全ての生命を玩具にしてしまったのも、全部ネスが悪いんだ。

ネスが、あの時、ハッピーハッピー村で僕を殴るか、無反応でなければ・・・・・・・こうは、ならなかったんだ! 僕がこうなってしまったのも、僕の人生が不幸なのも、僕の心を理解しなかった、僕を無視し続けたネスが全部悪いんだ!!

ネス。お前だけは絶対に許さない。必ず、お前の居る世界を見つけ出して、じっくり復讐してやるからな・・・・・・・・待っていろよ、ネス。

 

 

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