未来からの予言者

2016年02月18日


投稿日: 2014年9月8日

寝ている間に自分の住んでいる時代から過去へタイムスリップさせられた私はホームレスを演じる事になっていた。過去へタイムスリップさせられてから、約半年が過ぎた。この時代の人間にとっては世紀末なパンクな格好だと言われていた服装も捨てた。世話になったホームレスの肌着を遺産に着込んでいた。

「どうだァ? 自分の名前や故郷、思い出せたかぁ?」

「いえ……まだ、はっきりとは…」

私のテントに歯が数本しかない汚らしい服をまとった腰の曲がったホームレスの老人が尋ねてきた。

東京に暮らし始めてからの公園暮らしは悪いものではなかった。この時代は日本史上における最高の経済状態の時代らしい。比較的新しい家電やインテリアがゴミとして捨てられていて、ファーストフードや消費期限が過ぎた食料品もすぐにゴミとして捨てられていたので、食ったり不便する事はなかった。この時代ではホームレスや無職というものの存在の方が珍しいようで、死にかけたヨボヨボの老人でさえもきちんとしたスーツをまとったサラリーマンがスカウトに来ていた。大半のホームレスはスカウトされて、サラリーマンとして社会復帰するのだが、中には物好きも居るようで、わざとホームレス生活をやる世捨て人の老人も居た。それが私が過去へタイムスリップした時に色々とこの時代で生きる術を教えてくれた人だった。彼は大学教授であったが、脳に腫瘍を持ち、家を飛び出して失踪と言う形でホームレス生活を始めた。脳に腫瘍が出来るほどストレスが溜まっていたらしく、日頃目にする東京の風景やワイドショーのニュースを見て、様変わりしていく日本に恐怖して世捨て人を選んだらしい。彼は愛国心の塊のような人間だった。ワイドショーや建設業界の表舞台で大金をチラつかせて、政治家や財政界、庶民を利用しようとするヤクザと呼ばれるジャパニーズ・マフィアの支配体制に怖くなったそうだ。彼は私に一般常識や彼の持つ経済学の専門知識、ホームレスとして生きていく為の知恵や生活などを学んだ。私はお礼に自分の知っている世界や出来事を話した。彼との会話の中で彼はあまり使われていないノートをゴミ箱から漁り出して、余白にメモを書き留めて、私に言った。

「お前は未来の日本から来た男だ」、と。

自分がタイムスリップしたという事実を確認できたのも彼が残したノートと彼の解釈のお蔭だった。名前も故郷も言葉も何一つ忘れてしまった私が生活していく内に取り戻していったのは未来の記憶だけだった。頭にこびり付いている記憶はこれから日本や世界で起こる出来事や事象ばかりだ。

彼はノートを必死に書き留めて、それからしばらくして亡くなった。彼が亡くなった後は、彼と古い旧友である私に話しかけてきたホームレスが保護者役になっている。

「まぁ……なんだ。とりあえず、飯でも食おう。今日はな、金粉のふりかけと一口齧っただけのビッグマックとインスタントみそ汁と煙草と酒と、サバ缶だ……」

「あの……」

「ん? なんだ?」

「今日は空き缶拾いはしないんですか? 1缶、100円なんでしょう?」

「今日は駄目だ…」

ホームレスの男が顔をしかめて言った。

「何故ですか?」

「今日はな……別の連中がやる事になってる」

「分担制…ですか」

「ああ…」

「俺らは資本主義社会で生きてる汚らしいハイエナみたいな連中みたいに、他人の仕事までは奪わないのがルールなんよ。俺らはお互いが協力し合って生きている」

「素晴らしいですね……みんながそうなればいいのに」

僕が言うと、ホームレスは胸ポケットから煙草を取り出してそれを1本吹き始めた。湿ってるのか、煙草には中々火が着かなかった。

「原始時代はそうだったんだけどな……そういや、あの大学の先生もあんたの予言も言ってたけどよぉ……日本って、数年後に本当に経済が悪くなんのか?」

僕は少し顔を沈めて押し黙った後に言った。

「はい」

ホームレスは煙草の煙と同時に大きなため息を吐いた。

「なんでだ?」

「それは……あの人のノートにもあるように、みんながお互いの仕事を奪い合って、高値で物を売り続けていったからです。株とかと同じですよ。安い時に買っておいて、最大限に高くなった時に売るって奴です」

「あの人のノートか……本当はあんたの世界での結果なんだろう」

「……」

僕は顔を下に向けて押し黙った。ホームレスはまた煙を噴いた。今度はドーナツ型の煙だ。

「しかし、日本人ってそんなにバカだったのかねぇ……」

「工業製品や建物を中心に科学技術の製品は売れていますが、将来的には中国や韓国にニッチを奪われて、衰退していきます」

「ニッチ?」

「生物学で言うところの、食物連鎖上のポジション(役割)って奴です。日本の製品や建設物が売れたのは低コストで高品質で大量生産出来るからです。しかし、将来的には中国や韓国にその特権を奪われるし、今度は低価格競争と小型化に重点を置き過ぎて、日本は土地や税金が安い東南アジアへ工場を移して行きます」

「アイディアとか、日本独自の技術とか、科学力があるだろ?」

「2000年代頃にパーソナル・コンピューターが一般社会に普及してパソコンやその派生機械、パソコンが独自に持つインターネット技術というのが、ほぼ全てアメリカのアイディア、独占技術になっていくので、日本はオリジナルの技術や科学を生み出していませんでしたね。たとえ、生み出しても企業の独占になる風潮が根強いから、優れた技術者や科学者ほど中国や韓国に技術を提供しています。それは日本政府も同じなのです」

「そうかぁ……現実は非情なんだな。今働いてる連中とかはどうなる?」

「大半が解雇されます。僕達のような形態も珍しくなくなる。サラリーマンになるのが将来の夢になって、殆どの若い人が無職で親に頼って家に引きこもるかボーナスや退職金の出ない今のサラリーマンよりも待遇の悪い労働を強いられます。こちら側から人(奴隷)売りの会社に非正規で雇ってもらうように頭を下げる立場になります。大卒もゴミカス扱いにされますね。製造業が人件費の低コスト化と法人税逃れの為に海外へ移動するから、日本に残るのは大半が根性論で成り立っているサービス業しかないので、若者は時代の犠牲者に成り立っている。先進国のように女性と外国人ばかりを優遇して雇い入れるのは良いですが、日本人の男性に対する労働におけるポジションは昭和時代のステレオタイプのままだし、雇用環境は悪化する一方ですよ」

「ひでぇ話だな……俺らみたいに好きでホームレスやる時代じゃなくなるんだな。なんで、若い連中は反発しないんだ?」

「この時代の後に生まれたからでしょう。だから、貧乏や節約がベースだと考えてる人が多いし、日本の教育制度自体が単一化され過ぎていて応用性が効かないから、革命とか社会運動を起こす人も居ないんでしょうね」

「要するにマニュアル化か……」

「多分、この時代から自分の頭で考えて行動する日本人が居なくなったんじゃないですかね? 私の時代と違って、模範解答だとか正答というものが用意されている」

「お前、何時代の人間だ?」

ホームレスの男は眉をひそめて鋭い眼光で私を見つめ始めた。私は頭を抱えて、質問の答えを探すが、答えはすぐに出てこなかった。

「分からない……ただ、落ちていた漫画のタイトルで例えるのなら、『北斗の拳』でしょうか……」

「世紀末? ん? ん? 00年代は日本はあるんだろ?」

「世紀末は表現上の言葉ですね。実際は1999年よりも先の未来ですよ」

「まぁ、いいや……少なくとも20~30年後までの未来は分かるってことだ」

ホームレスの男はそう言うと、指で音を鳴らした。すると、テントの外からスーツ姿で角刈りの小指のない髭を生やしたサングラスの男たちを呼び寄せた。

「な、なんだ!」

僕はスーツの男たちに一斉に囲まれた。ホームレスの男は不敵な笑みを浮かべながら言った。

「へへ、悪く思うなよ。お前をテレビ局に売れば、俺は大金持ちだ。あいつの遺言を無視する事になるが、俺の辞書には『利用できる奴は最大限に利用する』という名文句があるんでな」

「お前……」

「あいつがお前を育てておいてくれて良かったよ。あいつとこのノートが居なきゃ、お前は精神病棟送りだからな。理由さえあれば、愚民はいくらでも騙せる。今はノストラダムスの大予言の予言ブームでこの手の話は儲かるからな。ヒッヒッヒッヒ!」

「貴様…ぐわぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」

僕はスーツ男たちに猿轡をされて、麻袋に放り込まれて担ぎ出されて、車のトランクへ押し込められた。

車はしばらく走った後、僕は袋に詰められたままどこかの建物の中に入れられた。そして、袋から顔を出せるようになると、辺りを見回してみた。どこかの倉庫のようで薄暗く、怪獣の着ぐるみやマペットが乱雑に置かれていた。いずれもどこか破けてたり、古びてた。この頃の日本は”モノを大切にしない”国だったのだろう。これらは見た限りではゴミのようにしか見えなかった。しばらくの時間が過ぎた後、倉庫の部屋を開ける小太りの色の付いたサングラスをかけた縞々模様のスーツを身にまとった醜い顔の男が出てきた。

「君かね……未来を知っている男というのは?」

「……」

僕はしばらく黙り込んだが、男の両端に付いているガタイの良いサングラスをかけた角刈りのスーツ男たちに暴行を受けた。

「……喋る気になったかな、ん?」

「だ、断片的にしか分からない……それに30年後ぐらいの記憶だけだ」

「それだけあったら、結構。今は1990年だから……ざっと、2020年ぐらいだな、ん?」

暴行を受けた僕は黙り込みを決め込んでいたが、小太りの男は胸ポケットからジッポを取り出して、火を付けて、僕の手に近付けた。

「う…う……」

「どうだァ? 喋る気になったか? クソガキィ!?」

僕は男に頭を掴まれて耳元に男の顔が近付いた。僕はその臭い息に耐え切れずに小言と唾を男の頬に浴びせた。

「く……臭い……息を吐きかけるな……金に目が眩んだ外道が!」

その言葉を聞いた男は酷く乱心して、何度も僕の顔を靴で踏み付けて僕の頭を壁に叩き付けた。その様子を見ていたサングラスの男達は小太りの男を取り囲んで抑え込もうとした。

「ボ、ボス……マジで死んじまいますよ! そんな事やったら」

「ちっ……今がバブルじゃなかったら、この糞ガキを東京湾のコンクリに埋めてやるところだ!」

小太りの男がそう言うと、男はジャラジャラしただらしない音を立てさせながら、長財布を取り出して、そこから万札を何十枚も取り出して、僕に浴びせた。

「とりあえず、前金だ! クソガキ!! 番組が終わった後はアメリカで贅沢し尽しても使いきれないだけの金をくれてやる! なにせ、ワシはアメリカのあの不動産を買収した三丸の社長と友達の偉いテレビ局のオーナーなのだからな!!」

わざわざ説明口調で喋りながら、男は僕の頭を思いきり踏み付けて、倉庫から出ていった。

「こ……こんな、腐ったトマトのような人間ばかり居るから……日本は滅んだんだ…」

僕は一言言った後に意識を失って倒れ込んだ。このテレビ局に来てから、僕は人間の醜さを思い知って人間不信に陥っていた。金や欲望は人格さえも支配する。そう感じた。この時代にタイムスリップしたのは間違いだった。日本史において最低最悪な時代だと言っても過言じゃないと思った。金に執着し過ぎた結果にこの国は腐敗が加速して、若者が夢や希望を抱きながら生まれ育つような時代じゃなくなっていた。僕にとっては日本における最大の元凶は金と欲望を爆発的に増殖させたこの、忌むべき時代であると感じた。僕は涙を流しながら、意識を失った。痛いとかそういうのじゃなくて、精神的な痛みと人類に対する絶望だ。自分がこの時代にタイムスリップした目的が何だったのか、それは分からないが、この時代にタイムスリップしたのは自分の意志で無い事は確信できたのだ。

「さぁ! それではステージに上がって貰いましょう! 遠い未来からやってきた予言者の男です!!」

僕は黒服の男達に囲まれて、倉庫の外から漏れてくる甲高い声を聞いた。男達は座り込んだ僕を無理やり立たせると、両脇を掴んで僕をテレビ番組のステージに無理やり立たせた。司会者とゲスト達は唖然として、僕を見て冷や汗をかいていた。無理もなかった。番組の収録が始まってから、僕はずっとうつむいたまま、頭を上げる事はなかったからだ。

「あ、あのぅ……」

目がくりくりしたミニスカートを履いた巻き髪のマイクを持った女が僕に近付いてきた。僕は口元にマイクを突き付けられたが、口を開こうとはしなかった。会場には偉そうな大学教授や作家、物好きそうなオカルト研究家のおっさんが審査員として座っていた。どうやら、僕は全国ネットを通して見世物にされるようだ。

「何か喋ってくださらないと、番組が終わっちゃうんですけど……」

女が喋りかけてきた。司会者も関西弁で「そうやそうや」って相槌を打ち、観客達からはゴミが僕に対して投げ付けられてきた。その光景を見かねたのか、占い師のような四角い帽子を被った着物姿の男が審査員の席から語り掛けてきた。

「未来の話を仰ってくれるだけでいいんですよ。ギャラは悪く無いんですから…」

その言葉を聞いた僕はカチンと来て、睨み付けながら叫んだ。

「あんた等はSF作家だとか科学者なんだろう? だったら、未来の話をすればこの世界がどういう結果に成るのか分かるはずだ!!」

「ん? ん? それはタイムパラドックスって事なのかな……?」

スーツ姿の偉そうな服を着た男が喋りかけてきた。おそらく大学教授か何かなのだろう。僕は立て続けに言い放った。

「そうだ! この世界なら、SF映画も漫画もアニメもライトノベルも小説も過渡期のはずだ。そういう作品を読んでいる賢いあんた等なら、未来の話がどれだけ悪影響を与えるか分かるだろう!!」

「ですが……良い結果だったのか、悪い結果だったのか、ぐらいは分かるのでは? それに貴方は見ず知らずのホームレス共には語ってる……なら、あんなゴミ共に語るよりも私達に語る方が貴方としても有意義なのでは?」

○○会社の社長という札が置かれた席の小太りの男は喋ってきた。

「そうやって、人を見下すような物言いや経営ばかりしてるから、世界中の経済がどん底になったんだ。あんたの会社だって、あと数年後には倒産。あんたはアメリカでピストル自殺さ」

「何をたわけた事を……」

そのやり取りを聞いた途端に会場から歓声が湧き上がった。小太りの男は冷や汗をかきながら、顔を真っ赤にしていた。

「すると……貴方の未来では、経済はもとより未来の結果は良くなかったということですか?」

「そうだ」

未来の事を語るつもりはなかったが、まんまと男の口車に乗せられていた。白衣を着た白鬚が目立つ禿げ頭の老人が語り掛けてきた。

「それはノストラダムスの大予言か何かで?」

出っ歯が目立つ島縞模様の黄色のスーツを着たサングラスの男が喋りかけてきた。

「違う。そんなものはデマだ。未来の世界はあんた等が想像するような良い世界じゃない」

「じゃあ、ターミネーターの世界みたいなもんで?」

「それも違う。だが、戦争は当たっている。これから数年後に日本はバブル経済が崩壊して多くの大企業が倒産する。公務員の社会的地位は民間企業の正社員と逆転するんだ。2000年までにリストラ、いじめ、引きこもり現象が深刻化して、高学歴がステータスだった就職情勢も末期を迎えてオウム真理教のようなカルト宗教に依る無差別殺人事件も横行するんだ。大規模な地震も2回ある。2000年以降にはある馬鹿どものせいで更に公務員が削られ、正社員の雇用枠に代わって非正規雇用が一般化するから、若者は満足に飯も食えなくなるんだ。ニートやフリーターといった親元で暮らす連中も社会問題化するし、高齢者が増え過ぎて老後破産や医療費負担と増税が圧しかかってくる。2008年にはリーマンショックで世界大恐慌以来の大規模な不景気を迎える。日本では原発が爆発して関東と東北の一部の地域では人が住めなくなる。2015年にはクリミアとロシアの間で揉めて、深刻化していた中東地域である新興国が先進国中からニートやフリーターのような若者を集めて特攻テロを始めるんだ。エボラ熱の問題も解決できず、経済も回復せず、90年代から問題視されていた地球環境の破壊問題も放置され続けていたから、天災が地球上を苦しめ、食糧不足に陥る。あとは第3次世界大戦の幕開けさ。俺は第3次世界大戦が終わった物資のない時代からやってきたんだ。第3次世界大戦が終わった後、人類はロボットと人類の生活を統制監視するマザーコンピューター(マリア)を作ったんだ。マリアは当初様々な思考プログラムをばらけさせて各国の監視を担当していたが、いつの間にか思考が違う同士のプログラムがくっ付きあって統制していたロボット達を先導して人類に終焉戦争を挑んできたんだ」

「ターミネーターの見過ぎですな。バカバカしい」

白衣の男が呆れた顔で言い放った。

「そうさ。俺達の世界はターミネーターの世界のような物さ。だが、マリアは元々13体のプログラムに分かれていたんだ。マリアを統制するワクチンのようなプログラムも居たんだ。だが、マリアはそのプログラムを吸収して人類が統制管理していたサーバーやプログラムまでも乗っ取り始めた。マリアの思考回路は人間と同じさ。コンピューターでは考えられない思考に基づいてリスクを恐れない大胆な行動を仕掛けてくる。犠牲を恐れないコンピュータープログラムほど恐ろしい存在はないだろう?」

「な、なるほど……しかし、SF小説のような話ですな。日本にチャールズ・マンソンのような犯罪者や大規模な地震による原発事故、座敷童のように働きも学習もしない若者が出てくるなど……」

スーツ姿の小太りの男が冷や汗をかきながら言った。

「全て事実だ。日本はもとより、世界は2050年までに大規模な不景気と食糧不足を経験して第3次世界大戦を起こす。その結末がロボットやコンピューターによる監査統制社会と遺伝子操作によって2種類の人類が出現する事になる。その歴史はおよそ数億年続くと予測されている。俺はロボットやコンピューター支配の社会の下で生活する人類と戦争している兵士だ。だが、奴等はニワトリやカラスを先祖回帰させて恐竜のような怪鳥を遺伝子操作で生み出して、生物兵器として投入してきている。俺は奴等に対抗できる科学力と歴史の記録書を手に入れる為にこの時代へ調査に来た。だが、この時代の人間はどうだ?」

俺が喋り始めると、会場に居る人間は全て沈黙して青白い顔になっていた。俺の鬼のような形相に震えてたのかもしれない。本来、未来の話は過去の人間に語ってはいけないことになっている。俺はおそらく未来に戻れば、存在そのものが消滅させられることになる。それは俺自身が赤子の時点でだ。それは薄々分かり始めていた。俺の肉体は徐々に透明度を増してきはじめたからだ。観客や司会者達が青白い顔を見せるのも自然だった。俺の心臓の鼓動と脳信号の動きは鈍くなり始めて、徐々に呼吸が乱れ始めて胸が苦しくなり始めた。だが、俺には最後にやらなければならない任務がある……。

「俺は過去の人間に未来を語らない為に記憶を一時的にフリーズさせてきた。しかし、俺は全ての記憶を取り戻して、未来の話を全て過去の君たちにしてしまった。俺が君たちに失望したのはこの時代の人間は金の事しか考えていなかったことだ。それは資本主義の社会で生きる諸君たちにとっては普遍的で常識的な事なのかもしれない。だが、自然回帰と技術革新の瀬戸際の世界で立たされている俺にとっては君たちのような平和ボケした連中を見た事に大変虫唾が走ったよ。金の為ならば、情報供給の為ならば、人命さえも軽んじる君たちに天罰を下す事にした。俺も死ぬが、お前等も死ね!!」

「な、何をするつもりなんだ……」

その時、七三分けの髪型のサングラスをかけた司会者がサングラスを取って、目を細めて俺の右手を見つめた。俺は右手の上の空間を捻れさせて、ビームマシンガンを未来から取り寄せた。転送技術は時空を越えて物体を召喚させることが出来る。万が一タイムマシンが故障した時の一度きりの切り札だった。俺は自分に一度だけ許されていた物質の転送を完了させると、ビームを放てる機関銃を持ってニヤりと笑って見せた。目に入った司会者の隣に居た女は逃げようとしたが、俺は欠かさずにマシンガンを頭めがけて撃ち放った。女の頭はスイカのように破裂して脳みそが四散に飛び散った。近くに居た司会者やカメラマンに女の血液が大量に覆いかぶさった。俺はくるくると自分の身体を回転させて会場の人間全てを皆殺しにする事にした。任務が失敗して未来の話を過去の人間にした場合は過去の人間を抹殺して記録を消滅させることが掟だった。俺は存在自体が抹消されるが、未来の世界の歴史を守る為に俺に干渉した人間は出来る限り一人も帰さずに殺さなければならない。

「ガードマン! ガードマン! 奴を止めろ!! テロだー!! 自爆テロだ!!」

テレビ局のオーナーらしい奴が大声で叫んで、俺を捕まえようとガードマンが銃を放つが、弾丸は俺の身体をすり抜けていった。

「ば、化け物か……」

俺はニヤりと笑って、目に入る人間全てにマシンガンを撃ち続けた。会場に居る人間とテレビ局の人間を全て殺すまでは消滅出来ないのだ。

「一度やってみたかったんだよぉ……人殺し……その為に時空調査管理局に入隊したんだから……ひゃっははははははは!! ヒャーハッハッハッハハハ!!!」

全てが終わると俺の消えゆく身体の前にはたくさんの肉塊と骨と血液が真っ赤に会場を染めていた。俺は薄ら笑いを浮かべながら、自分の存在や概念が消え去る事を感じながらも心地よさを感じていた。俺の家族や親戚や先祖もおそらくは存在を当局に抹消されるだろう……だが、悔いはなかった。絶望の未来を招いた過去の人間を殺せることが最大の至福だったのだから。

「快感」

それが僕の最期の言葉だった。

 

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